「天の川がよく見えるといいなー」
じわり、体から汗が出る。
稽古時とはまた違った汗。
それを気にする風でもなく縁側にぶらりと足を投げ出して。
勝永は誰に言うでもなくけれど独り言ではない大きさで言った。
それに反応して一人苦笑した。
「この天気が続けば、雨が降るやもしれませんねぇ」
全登がぱちりと黒い碁石を置く。
相手をする盛親は小さく唸った。
勝永は庭に向けていた視線をめぐらし、
「デウスの力で何とかしてくれよ」
「無茶言うな阿呆」
期待した返答は全登ではなく盛親から来た。
盛親は勝永を見ずに ぱち、と白い碁石を置く。
「お前に聞いてない!」
ちらと勝永を見やった盛親とそれを真正面から受ける勝永。
険悪な雰囲気になるかと思えばそれはため息と共に打ち消された。
「天候ばかりは運次第だろう。なぁ?」
やれやれといった調子。
3人とは少し離れた所で又兵衛が横を向く。
そこには湯飲みを手に抱いた幸村が微笑んでいた。
「日頃の行いが、現れるでしょう」
「えーじゃあ晴れるのか。良かった良かった」
オレ行い良いから、と勝永は何度か頷き、視線を庭へ戻した。
盛親は何か言いたそうな顔をしたが全登に催促され碁に集中し直した。
「私も七夕には晴れてほしいです」
又兵衛の真後ろにいる重成が言った。
肩を揉んでいるのだ。
又兵衛は遠慮したのだが半ば強引に重成は行った。
決意した重成は誰にも止められない。
このようなことは数回あった。
もうみな見慣れた。
当初幸村と勝永が父と子のようだとからかい、二人は照れた。
しかしそれはもう自然な事として受け入れられたらしい。
重成は肩を揉む手に力を込めた。
「織姫と彦星が無事に会えるように」
「雨でもカササギが助けてくれるそうではないか」
又兵衛の言葉に、重成は微笑んだ。
「涙を流さずに会えたほうが良いと思いまして」
「重成殿、お優しい・・・」
幸村がにこりと微笑む。
重成は少し照れると勝永に目を向けた。
「勝永殿もそのように思われたのでしょう?」
勝永は前を向いたまま、頬をかいた。
それを肯定と周囲は受け取る。
平和な雰囲気に包まれた頃、
「天の川は、母乳であるという話も南蛮人から聞きましたが」
ふと全登が呟く。
それに盛親と勝永が吹いた。
皆が全登を、何を言うのだと見やった。
「あるけいですという者が母乳を強く吸い過ぎたため流れ出」
「あっ貴方という方は!」
盛親が慌てて遮ると、全登はくすりと笑った。
「おや盛親殿。いやらしい想像でも、」
「していない!」
「男子としてはある意味正常かもよ」
「勝永!」
「・・・」
「せ、せめてからかうか笑い飛ばすかしてくれっ」
神妙に受け止めたような顔をする重成に盛親は汗をかいた。
助けを懇願する目を向けても、
又兵衛はくつくつと笑うだけで何も言わない。
幸村は相変わらず微笑んでいた。
意地悪いのが揃っている。
盛親は深くそして盛大にため息をつくしかなかった。
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反転で呟き。
ミルキーウェイの事が言いたかっただけだったり。
2008.7.7