本心を隠せ。
善良なふりをせよ。
さすれば神でさえもだまされる。
「雪が」
白く吐かれた息と共に。
そっと手を伸ばせば、冷やりと感じる間も無く。
舞い降りる六花は散ってゆく。
「積もるかな」
散る花を見送り続けていた勝永は、ぶるりとひとつ震えて伸ばしていた手を引っ込める。
手が痺れ、足が痺れ、そして内側へと痺れは伝わる。
その感覚が勝永にとっては楽しみの一つだった。
もっともそれは、冷えた己を包む相手が居ればの話だったが。
と、
彼の疑問に背後から答えが返ってきた。
「積もって欲しい、です」
積もって。
積もって。
積もって。
全てを白銀へ。
「雪、好き?」
吐く息白く外へ出てくる幸村の姿を勝永は目端に映す。
寒くは無さそうだった。
「さぁ・・・どうでしょうか」
「どうでしょうか、って」
呆れた様に勝永が向き直っても、目は合わなかった。
彼は、どこか遠方を見ているようで。
見ていない。
勝永はそう感じた。
ふと幸村の肩が目に入る。
庭へ出て僅かだというのに羽織は白く染められつつあった。
「白く覆われてしまいたい・・・」
「は?」
瞬きを繰り返し勝永は幸村の表情を見つめる。
ひっくり返った声が可笑しかったのか、幸村は表情を緩めた。
「と、全登殿が」
「へえ」
「覆ってしまえば神様も騙されると」
「騙してどうするんだ」
「さぁ・・・」
「まあ、全登は意地悪いからな。覆いでもしないと神様が救ってくれないんだろ」
この場に当人が居ないことを良い事に、勝永はけたけたと笑う。
幸村は、肩をすくめて苦笑するに終わった。
「積もったら、さ。雪だるま作ろうか」
払いながら、鼻先や耳を赤くして勝永はニッと笑う。
「真っ白な、綺麗な雪だるまが、欲しいです・・・」
「うん。綺麗なやつ、作ろう」
彼の笑顔に応えて幸村も微笑した。
引きこもっている人物へ突撃し、温まろうと計画した二人は互いに雪を払った。
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反転で呟き。
明石が好き。
2009.1.16