「秀長様っ、これを、受け取って下さい・・・!」
まるで女子が憧れの異性へ贈り物をするかのように。
俯き加減の高虎は、それを秀長の胸へ押し付けるように手渡すと、何か言う暇を与えず足早に去って行った。
秀長は何が起こったのかもわからず、きょとんとしたままだった。
秀吉とねねの他愛ない夫婦喧嘩を仲裁して。
ゆっくりと秀長は廊下を歩いていた。
そこに高虎がばたばたと来たのだ。
「おや、高虎」
秀長はのほほんと微笑みながら少し手を上げた。
「秀長様!・・・あ、あの」
「何かあったのか?」
高虎のような大きい男が女子のようにもじもじとしていて秀長はくすりと笑った。
「・・・高虎」
促すように呼びかけると、高虎はさっと包みを差し出した。
そして足早に去って行ってしまうのだった。
「よう小一郎、なにぼーっと突っ立ってんだよ」
バンと肩を叩かれ、秀長は我に帰った。
「正勝殿」
「ん?なんだそれは」
正勝は秀長の持つ包みに興味を示した。
「先ほど、高虎から頂きました」
「ふーん・・・」
正勝は考えるように腕組をする。
それを見て秀長は首をかしげた。
「今日は何か特別な日でしたか?」
「あー、まぁ、な。おね殿も虎や市松から色々貰ってたし・・・」
「義姉上も関係しているのですか」
「いや、儂はお前が関係したことに驚いた」
でも待てよ、と正勝はまた考えると、すぐにぽむと手を打った。
「確かにそれらしい部分もあるわな。納得納得」
豪快に笑うと、正勝は秀長の背をバシバシと叩いた。
「がんばれよ、小一郎!」
「え」
なにが。
秀長は去っていく正勝に手を伸ばしたが、とどかなかった。
自室に戻った秀長は、高虎から貰った包みをそっと開けた。
その中身は。
「まんじゅう・・・?」
10数個の茶饅頭が姿を見せた。
そういえば、以前どこそこの茶饅頭が特に好きだと言ったことがあった。
秀長はそれを思い出して。
そんなことを覚えていてくれたのかと嬉しく思った。
「高虎を呼んで、お茶でもするか・・・」
高虎から貰ったものではあるけれど。
一人で味わうのは勿体無いと、秀長は微笑んだ。
その高虎は。
何をしているんだ己はと恥ずかしさのあまりうずくまっていた。
けれどふと、
今日が何の日か気づかずにいそうな秀長を思い出して、
ちょっぴり寂しくもなった。
いや、まだ特別な行事はたんとある。
めげるのはまだ早い。
高虎はそんな浮き沈みを繰り返していた。
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反転で呟き。
母の日でふと秀長が出て来た事に一瞬思考が止まった・・・・
2008.5.11