「・・・ですから、」
隣で高虎は嬉しそうに話し続ける。
犬であればしっぽを振り回しているだろう、と秀長は思う。
高虎の話を聞きながら、庭へ目を向けた。
暖かい日差しの中。
縁側から綺麗に手入れをされた庭を眺める。
梅ノ木に雀が2羽とまっていた。
秀長は、雀にとっても今日は過ごしやすい気候だろうなと思ってから、あまり高虎の話を聞いていないではないか、まったく。と自分を叱ってみた。
高虎の話では所々に
「家康殿が、」
「・・・家康殿は」
「家康殿と」
と、名前が出る。
聚楽第の側にある徳川家屋敷。
この屋敷造営を頼み、高虎が私財を投げ打ってまで完成させてから、この両者は仲良くなったそうで。
庭から高虎へと視線を移し、そしてゆっくりと。
そっと秀長は手を伸ばした。
高虎は気づかない。
そして。
むぎゅ。
そんな音がお似合いで。
秀長は高虎の頬を両手で挟みこんだ。
必然と、首を痛めるような形で高虎は強制的に横を向いた。
一瞬の沈黙。
「ひ、ひでなが、さま・・・?」
不思議そうに高虎が声を掛ける。
ハッとして我に返ると、秀長は素早く手を引いた。
「・・・」
お互い不思議そうに瞬きを数度。
秀長が謝ろうとしたその時。
こほん、と咳がでた。
高虎が心配する。
「まだ御加減が宜しくありませんでしたか」
また思い出したように、あ、と声を上げて
「私の話ばかりで申し訳ありませんでした」
と頭を垂れた。
秀長がまたこほん、と咳をすると、
「大丈夫。すぐに治る」
微笑んで返した。
「高虎が嬉しそうに話すのを見ていると、私も嬉しい」
そう言うと、高虎が微かに赤くなるのを秀長はみた。
ゆっくりと立ち上がる。
「・・・こんな所にとどめておいて、すまないな」
秀長は困ったように笑うと、静かに部屋を出る。
「秀長様!」
慌てたように高虎が声を上げると、厠へ行く。と秀長は笑った。
高虎はぎゅっと唇を噛んだ。
音の無い部屋に
「どうして御自分を卑下するんだ」
高虎の声は掠れて、聞こえる者はいなかった
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反転で呟き。
想い想われて。
2008.6.2