もち。


「これを全登殿に届けてくれないか」
そう又兵衛から手渡された物は。



「餅?」
白い餅が数個、包まれていた。
「中にイチゴが入っている」
そんな嬉しそうに話されても。
と、盛親は思いつつも、開いた包みを丁寧に閉じた。
それを見つめながら
「使い走りのようですまないな」
又兵衛は槍を肩に乗せて苦笑した。
「いえ、これぐらい」
「後でそなたにもやろう」
「ありがとう」
微笑みながら会釈して、盛親は全登の所へ向かった。




「おやおやまさか、あなたが使い走りとは」
盛親が、又兵衛に頼まれた物だと持ってきて全登は素直に驚いた。
「も、文句があるならそう言ってくれ」
照れるようにむすっとする盛親に、
「とんでもない。わざわざありがとうございます」
全登は優しく微笑んだ。
「この後はお暇ですか」
一緒にお茶しましょうと全登は盛親を誘った。
特にすべき事というのもなかったので、盛親はすぐに承諾した。


「丁度良いところでした」
餅の入った包みを開けながら全登は言った。
「実はあなたのところへ遊びに行こうとしていたのです」
「俺の、ところへ?」
「ええ」

そういえば何が気に入ったのか彼はちょこちょこ尋ねてくる。
盛親は手渡された茶を啜りながらふと思う。
こんな自分に興味があるのだろうか。
どうしてだろうか。

「そんな、なんで俺のところへ」
あまりに淡々としていたので、全登はちらりと盛親を見た。
「ははぁ。なんで、ですか」
「あっ、いや」
「気に入った、というのでは足りませんか?」
「いや、その・・・気にしないでくれ」
自然と口から出てしまったものだから盛親は慌てた。
けれども当の全登は
「美味しそうなお餅ですねぇ」
今までのやり取りが無かったかのように微笑んでいた。
そして盛親の様子を気にも留めず、そっと餅を懐紙に乗せ、
「イチゴに餡子に餅とは」
よく思いついたものですねと関心する。
餅を盛親に手渡した。
「試みることが大事なのでしょうね」
全登が盛親を見る。
盛親も自然と目を合わせた。
「失敗を恐れてはなりません。
 いつでも主はあなたの傍らにいまし、そして守ってくださるのです」
いつの間にかクルスを取り出している全登。
ふと盛親は嫌な予感がした。
「主は恵み深く、その慈しみはとこしえに絶えることが御座いません。
 ですから我々は感謝の念をもって畏れ敬いながら」
「あーあー、それはまだ続くのか?」
耐え切れそうになかった。
盛親は無理矢理割って入る。
それでふと我に返ったのか全登は瞬きを数回。
「おや、まだ前説といった所ですが」
「・・・」
「盛親殿は、未だデウスの愛に気づいておられないのですね」
嘆かわしいことだと言わんばかりにため息をついた。
「ですがまだ時間は御座いますね。気長に行きますよ」
「あ、諦めてくれないだろうか」
汗を垂らして盛親は少しげんなりした。
「まさか」
全登は相変わらず微笑んでいた。









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反転で呟き。
この二人が好き。
2008.5.25