死に場所。


又兵衛はふと首筋に軽く痺れが走ったのを感じた。
「なにをしている」
振り返りざま鋭くねめつけるが、相手の表情は変わらなかった。
小刀を軽く構えた幸村がぽつりと呟く。
「あなたを、刺してしまおうかと・・・」
「どうかしたのか」
「猫のように、ふらり・・・消え失せてしまわないように」
微妙に話がかみ合わないのを感じて又兵衛は体ごと向き直った。
「誰が」
「又兵衛殿、が」
「くだらん」
「私の、知らぬ所では、嫌なんです」
「ふん。儂はな、」
「却下・・・」
「まだ何も言っとらん」
「又兵衛殿」
「うん?」
「私のために、死んで下さい・・・」
「真っ先に首を狙うか!」
唐突に勢いを付けた小刀を寸での所で又兵衛は避け、半ば反射的に幸村の右手首を掴んだ。
小刀は小さく震えはするが動かない。
純粋な力関係ではまだ上にいたことにひっそりと又兵衛は安堵した。
「ひとつ聞く」
「はい」
「殺したとしてその後そなたはどうするのか」
「又兵衛殿に、死化粧を・・・」
「施した後はどうする」
「燃やします」
「燃やした後は、埋めるのか?それで?」
「・・・」
「考えていないとみえる」
「そのあと、考えます・・・」
「どうだか」
鼻で笑う又兵衛に幸村はむっとして隠し持っていた鎖鎌を左手に構えた。
「ならば、示して見せましょう」
「待て待て」
思わぬ得物の登場に一瞬又兵衛は驚いたが、すぐに平常を取り戻した。
空いた右手を前に突き出し、待った、と動作する。
「如何しましたか・・・」
「確かめようが無いではないか」
儂が。
と又兵衛は付け足した。
幸村はしばらく考える素振りを見せて、ちょっと小首を傾げた。
「そう、ですね」
「ならばまだ殺されるわけにはいかんな」
「・・・」
幸村が訝しげにするもそ知らぬふりをして。
又兵衛は掴んでいた腕を放した。
目端に映った幸村の手首は赤く染まっていた。
「さて。儂は稽古場にでも行こうかな。手合わせなら付き合ってやらんことも無い」
「偉そうですね」
「悪いか」
「いいえ。その高慢、圧し折って差し上げます・・・」
「それはこちらの台詞だ」









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反転で呟き。
想像補完を希望します。

毎回毎回手合わせしようと話を逸らす又兵衛。
保護者というか世話係というか精神安定剤というかそんな(酷いな
安定剤でも取りすぎちゃいけませんけど。
2009.2.4