悪戯推奨祭。


「トリックオアトリート!」

幼子が似合わぬ大きさの羽織をかぶり、両手を突き出している。
「・・・は」
意味が分からず、高虎は首を傾げた。
奥で秀長がくすりと笑う。
両手を突き出したまま、仙丸は頬を膨らませた。
「たかとら。知らぬのか」
「はぁ」
「これはハロウィンというものでな。お菓子をくれなければいたずらする行事らしい」
「・・・」
「ちなみに、このかっこうはおばけを模しておるのだ」
「・・・。そうだったんですか」
手を引っ込め、得意気に話す仙丸。
しかし高虎は未だ釈然としない表情でいた。
すると、
「私もこの行事は知らなくてね」
微笑を湛えながら秀長が側に寄ってきた。
「菓子を持っていなかったので、悪戯されてしまったよ」
言いながら秀長は仙丸の頭に手を置いた。
「い、悪戯、ですか」
「お菓子をくれぬといたずらするぞーっ」
どもる高虎を尻目に。
無邪気にケタケタと笑い、仙丸は秀長に飛び付く。
よろけはしたものの秀長はしっかりと我が子を支え、
「はは、これ。いきなりは驚いてしまうよ」
苦笑を深くした。
そんな父を見上げ、仙丸はにこりとした。
「ちちうえ。どうやらたかとらもお菓子は持っていないようです」
「そのようだね」
秀長もつられてにこりとした。
「ではいたずらをしなくては」
「高虎には何をしてあげようか?」
その2つのにこりとした表情が高虎へと向けられる。
普段その微笑に邪気は感じられないはずが。
高虎は背中に何かひやりとしたものを感じた。
「もちろん、いつものです」
「では重晴よりも彼は体力があるから、存分にやってあげようか」
「はい!」
輝かしい笑顔で頷く仙丸。


一枚の葉が風に吹かれて舞った時。
屋敷内ではまた一人、犠牲者の奇声ともいえる悲鳴が木霊した。








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反転で呟き。
仲の良い親子。
2008.10.30