ぱたぱたと廊下に鳴り響く可愛らしい足音。
軽やかなその足は迷うことなく走る。
あの背に向かって。
「ちちうえ〜っ」
「わっ」
飛び上がるようにして抱きつく。
抱きつかれた衝動で秀長は少しよろめいた。
「ちちうえ。短冊はもうかかれましたか?」
「短冊?」
ふわりと抱きついてきた仙丸を抱き上げると、秀長は小首を傾げた。
「はい!」
元気よく差し出されたのは長方形の紙。
ああ、と秀長は合点する。
「そうか。七夕であったなぁ」
「おねがい事を書くのだそうです」
「仙はもう書いたのか?」
「いいえ。まだに御座います」
迷っているのだと仙丸は照れた。
その姿が愛らしくて。
秀長はにこりと微笑んだ。
「たくさん書いてもよいのだよ」
しかし仙丸はふるふると首を横に振る。
秀長を見たその目は決意を固めた目をしていた。
「1つです。でないと神様が困ってしまいます」
このような子が十にも満たぬ幼子とは。
優しい子だと秀長は仙丸を抱き直し、頷いた。
「仙は優しいな」
照れ隠しなのか仙丸は秀長にしがみつく。
秀長は苦笑すると、
「では父も短冊を書こうかな」
仙丸を見やった。
「なにをおねがいするのですか?」
興味があるのか、仙丸はふと顔を上げる。
「晴れた空に浮かぶ天の川を仙と見れますように」
「ちちうえ、それは仙もおねがいしとう御座います!」
早速書こうと目を輝かせて。
はしゃぐ仙丸に秀長は愛おしさを感じざるを得なかった。
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反転で呟き。
仙丸お披露目。
2008.7.6