魚屋とその主。


「弥九郎、またお呼び出しだぞ」
そう呼ばれてまたかと思いつつも城へ向かった。

主が上座に座る。
襖が開けられた瞬間から、威圧感を感じる。
この人は本当に凄い方なのだと弥九郎は改めて実感した。
けれども毎回それは崩れ去ってしまうのだけれども。

「弥九郎」
低い声で静かに呼ばれる。
「はいッ」
思わず力んでしまうのは緊張からか。
「・・・八郎がな、」
そう言って話し始めるこのお方は、本当に宇喜多家当主なのかと疑うほどだった。


本日の内容は、若君が最近弥九郎弥九郎と呼んでいる事について。
冷や汗たらしつつ弥九郎は答えた。
「や、そないに八郎坊ちゃんに好かれようなどという事は・・・」
「勝手に好かれて困るとでも言うのか」
「めッ・・・滅相も御座いません!むしろ大歓迎で!」
「・・・」
ふむ、と直家は頷くと、ギロリと弥九郎を見つめた。
「ならばこれより八郎の世話役となれ」
「へ」
素っ頓狂な声を上げると、また直家に睨まれた。
「不服か」
「きょ、恐悦至極に御座いますー!」
「そうだろう」
直家はひとつ満足そうに頷いた。

「八郎に万一の事あれば、その首、無いと思え」

捨て台詞ひとつ。
静かに襖が閉められた。
一人ぽつんと弥九郎は残され。
どっとため息がでた。
そのため息も、当主に聞かれるのではないかと心配したりもした。
「が、がんばらな・・・」
死ぬ気で。

弥九郎は恐ろしさと嬉しさが入り混じった顔をした。











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反転で呟き。
大好きだ。
2008.6.7